M&Aの手法で危ない会社を助ける!~銀行の借金と買収価格~

本ニュースで「危ない会社をM&Aで救済するという経営判断」というテーマで、是非皆さんには危ない会社救済の担い手になってもらいたいと言いました。今回はその第2弾で実際にどのように企業を救済したらいいかというお話をしたいと思います。
一般的に危ない会社の概念は資金繰りに窮している会社、借金が多い会社、業績が非常に悪く赤字経営の会社が挙げられます。もちろん、長く経営されている方々に言わせれば一度や二度そんなご経験をされた方も沢山おられると思いますがその時の経営手腕や様々なバックアップ、景気状況で乗り切られ今日に至っては同じ失敗を繰り返さないように経営されていると思います。しかしながら、そのような難局を乗り切られない会社も全国には沢山あります。もちろん、生き残りをかけて経営者は奔走されるわけですが多くの場合は金策に強いられて最終的には万策尽き残念ながら倒産したり、廃業したりと不運な結果になります。
では、我々はその場合、どのように危ない会社を救済すればいいのでしょうか。危ない会社をM&Aの手法で助けると言っても肝心な危ない会社はどのように見つけるのでしょうか?決して他人事ではないということが重要で自社の取引先の管理や同業他社の情報収集をする中で「ちょっとこの会社大丈夫かな?」
「最近、支払いが遅いな。」「最近業績がしんどいと噂を聞いた。」ということはあるでしょう。火のない所に煙は立たぬもので必ず商売をしていれば聞くものです。そのような会社の経営者は誰か助けてくれないかなぁと心の中で思っているのです。仮に仲のいい取引先の社長が「業績が芳しくないのでお金を貸してくれないか?」と言ってきたらどうしますか?正直、簡単には貸せないと思います。しかし、ちょっと乱暴な言い方になりますが、相手のピンチは自社のチャンスかもしれません、もちろん相手の会社が倒産するのを待つは最悪です。得意先や知り合いの経営者から借金の相談や会社が危機に瀕していると聞いたとき、自らM&Aをして助けようというスタンスが非常に重要です。これが正に日常の取引の中に生かせるM&A思考の真骨頂です。経営危機の会社を買収するためには、事業そのものをしっかり見極め自分の会社に取り込めるか。

具体的な手法として専門的な用語で言いますと
「私的整理を用いたスポンサー型救済」です。借金(金融債務)が多いから買収ができない、赤字だから買収できないではなく、銀行の借金だけをどうにかしたらこの会社は甦る、自社と一緒になれば黒字になる前提で救済するという方法です。仮に売上高5億円で利益は赤字、銀行借入が3億円あって債務超過で返済ばかりしているので会社にお金がない、または、銀行に返済猶予の協力を得ているが現状の業績では、到底完済の見込みがない、このような会社は残念ながら全国に沢山あります。経営者も半ばあきらめているケースもありますし、銀行も正直、完済は見込めないだろうと懸念先として、格付けしていることも多くあります。そのような会社から相談を持ち掛けられることは我々もよくありますが、正直、自主再建は厳しいという判断をする場合が多くあります。しかし、得意先も優良で、技術もあり、人材もいる、設備もそこそこ新しい、そんな会社を借金が多いからちょっとした赤字で倒産させるのはもったいなくないですか?経営判断の誤りはもちろん少なからずあるものの借金さえなくなればどうにかなる、赤字もリストラしたら解消できる、だったら借金を失くすためにはどうしよう・・・自分であれば黒字にできるかもしれない、この発想がとても重要です。

この状態で倒産したら銀行の借金返済は資産売却
(会社清算)などして3億円のうち5,000万円しか返済できないとしましょう。その場合、もちろん、全ての資産を現金化し返済したのち経営者は責任を取る必要があります。しかし、先に述べたように事業に魅力があれば買収による救済が可能です。倒産したら5,000万円の弁済だが、M&Aで買収したら資産の買取で、5,000万円と営業権(得意先、人材、技術力、ブランドなど)として1,000万円を上乗せする。
銀行は5,000万円しか返ってこない借金が6,000万円返ってきたらどうでしょうか?
こっちの方がいいですよね。得意先は守られ社員も雇用継続できます。失敗した経営者も何らかの待遇で再起を促せる可能性もあります。
では、銀行交渉をどのようにするのか?もちろん
我々のような専門家に相談することと同時に再生に強い弁護士の協力をいただきます。簡単に言えば、弁護士には債権者交渉(銀行)をしてもらいスポンサーとなる皆さんの資金、つまり買収資金を持って銀行交渉に挑みます。
先に言った倒産して資産売却だけならば5,000万円しか返済できませんが株式会社●●●●というスポンサーが買収した場合6,000万円(資産5,000万円+営業権1000万円)の返済になりますので銀行さんご協力くださいと。

これは、借金を踏み倒すような話ではないです。
正当な交渉で、弁護士を扇の要据え銀行の協力を得て新たな経営体制の下、立て直すということです。交渉にはある程度の時間を有しますが、双方にとってメリットは非常に大きいです。
スポンサーは借金0円の売上5億円の会社を手に入れることが出来ます。救済型M&Aは時間をお金で買うだけではなく、社会にも貢献していると言っても過言ではないと思います
かつて経営難に陥ったJALは会社更生法を申請し多額の借金をカットし公的資金により救済され経営者も代わり現在は再上場して経営しています。
もちろん、この場合は大きくて潰せないということもあり公金投入に賛否両論ありましたが、現在の日本の交通インフラは担保され多くの従業員や得意先は守られています。
そのようなことを鑑みると規模の大小ではなく、中小企業が中小企業を助ける、つまりスポンサーとなり危ない会社を救済することにより業容拡大につなげると同時に人手不足の解消にもなる可能性もあります。借金が多い会社は決して悪ではなく皆さんにとって宝の山かもしれません。
私は中小企業の救済型M&Aは地域経済、しいては日本経済にとっても非常に有益で健全な経済活動であると思っています
ので、このような事案が出た時皆さんも臆することなくチャレンジして欲しいですし、我々も全力でサポートしたいと思っています。

執筆者:島田 健作(しまだ けんさく)
株式会社ホワイトクロス代表取締役 / 株式会社オプティアス執行役員

M&Aアドバイザリー業務、事業再生・企業再生(再建)、販売支援、コスト改善を手掛ける。中小企業再生(再建)の社会的意義に注目し、財務改善や資金繰り改善、銀行対応にとどまらない再成長戦略の策定と実行により、企業の再成長の支援をしている。

お問い合わせ

お電話または下記フォームにご記入ください。 また、フォーム送信の前にプライバシーポリシーを必ずお読みください。
[contact-form-7 id="10850"]