危ない会社をM&Aで救済するという経営判断

私の前職でもある帝国データバンクは毎月全国倒産集計を発表しているが、2023年2月の企業倒産件数
(負債1000万円以上の法的整理が対象)について集計し分析を行った。
倒産件数は574件(前年同月428件、34.1%増)と10カ月連続で前年同月比増加。前年同月から30%以上の増加は、コロナ禍で法的整理の滞留による影響から反動増となった模様。2021年5月を除くと、2009年1月
(30.2%増)以来14年1カ月ぶりとのこと。

負債総額は1005億4600万円(前年同月780億6600万円、28.8%増)と、3カ月ぶりに前年同月から増加。
2月としては2019年以来4年ぶりに1,000億円超を記録した。これは実に企業倒産は3年ぶり増加確定。
「リーマン」以来の急増ペース、「物価高」など酷似―全国企業倒産集計2023年2月報とのこと。
確かに我々のところにもコロナ禍で業績が傷みなかなか回復しない、コロナ融資が底を尽き資金繰りが厳しいなど相談が増加している。先の倒産集計を見ても納得できる。やはりここ3年間のコロナ禍を乗り越えられなかった中小企業が増加したのだろう。コロナ融資や給付金などフル活用したがコロナの足かせは中小企業には多大な影響をあたえてしまったと改めて感じた。
かたや大手企業の業績好調と報道されているが、果たしてその業績は内需を喚起しているものか懐疑的なものでやはり円安と原料高による価格転嫁を大手が速やかに推進した結果だろうしそのしわ寄せは中小企業にも影響している。
テレビによく出ている有識者は日本には企業が多すぎる、中小企業は生産効率が悪いので淘汰されるべきと批判する方もいるが、確かに収益性を考慮すればその側面はあるが全雇用の70%は中小企業であるため一足飛びに生産性を批判することは抵抗感がある。むしろ中小企業の努力不足というよりも、オーナー社長が多いことや労働市場が流動化できないこと、規制緩和が進んでいないこと、中小企業への補助金など一時しのぎ的な政策、大手の厳しい下請け要求など構造的な問題と思われる。

果たして大企業は生産効率がいいのか?大企業こそ中小企業依存体質は強く、国際競争という理由とデフレ経済という足かせでコストの面については中小企業に頼ることが多かったように思える。中小企業がいるからこそ大企業の生産効率が担保されてきたことも忘れてはならない。
しかし、先の倒産件数を見る限り、やはり中小企業は厳しい状況にあり、コロナ禍で相次ぐ廃業により顕著になった中小企業の後継者問題もありコロナ後の先行き不透明感は拭えない。これは、ウクライナ危機や金融危機という地政学やマクロ経済的な要因とは異なり現実的に足元の業績や将来への不安による課題でありこの解決手段を本気で考えないと淘汰という言葉で片づけられてしまうことに強い危機感を覚える。
この課題を解決するためにM&Aは効果的手段であることはことある毎に訴えてきたが本気でM&Aによる救済を経営者には考えて欲しいと思う。本当に倒産する必要があったのか?倒産企業は確かに業績悪化や借入過多で財務内容が傷んでしまった企業は多い、もちろん、経営手腕の問題はあるにせよ、一定の得意先も有し従業員の雇用も支えた会社が倒産する危機に至った原因は様々であるがここでは敢えてそこに言及しない。
会社が危機に陥った経営者は最近ではリスケを銀行にお願いするが、それでも行き詰ったら資金繰りに奔走しますが、万策尽きれば弁護士に相談すれば破産申請しましょう、となってしまいます。本当にこれだけでいいのでしょうか?倒産する前にスポンサー探しをしていますか?破産前譲渡、つまり私的整理による救済型・再生型M&Aという手法による譲渡、しんどい会社の経営者はこのような手法を知っていますか?スポンサーがいないか?と必ず考えて欲しいです。

もちろん、健全経営の経営者は我々が危ない会社を救うためにスポンサーになるという意志表示を普段から示していただきたいと思います。
倒産による淘汰よりも、業界再編のプロセスの一つに危ない会社を助けることでグループ化し規模の拡大を狙うことのほうが社会的に健全だと私は感じています。もちろん経営危機に陥った経営者は痛みを伴いますが従業員の雇用や顧客は維持され迷惑をかける人が少なくて済みますし、自身もスポンサーの下、再起をかけることができます。

私も含めM&A思考の講師陣はこのような再生型M&Aについて様々な経験があります。もちろん、全ての企業が助けることはできませんが、全国に数百万社という企業が存在する限りスポンサーとなりえる企業は数多あるという思考をもっています。具体的なスキームについては次の機会にお話ししたいと思いますが、皆さんのお近くの経営者がしんどそうにしていたら、必ず声を掛けて欲しいですし、上記のような救済型のM&Aがあることを伝えて欲しいです。最後に、是非、皆さんも再生の担い手になって健全な中小企業の再編に貢献して欲しいと思います。

執筆者:島田 健作
株式会社ホワイトクロス代表取締役 / 株式会社オプティアス執行役員

M&Aアドバイザリー業務、事業再生を手掛ける。
中小企業再生の社会的意義に注目し、再成長戦略の策定と実行により、企業の再成長の支援をしている。

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