中小企業の経営課題とM&A

(1)中小企業にとってのM&A

中小企業とM&A

「M&A」は「企業の合併と買収」という意味である。

この、「合併」と「買収」という単語は、実に仰々しく、いかにも「大企業にしか関係のない崇高な経営戦略」というイメージを受けやすい。
実際に、ある中小企業の役員に「M&Aを検討しませんか?」と話した際、「え? M&Aって上場会社だけができるんじゃないの?」という返答がきたこともあった。

確かに、新聞やテレビで取り上げられるM&Aに関するニュースの大半は大手企業についてばかりだが、実は国内で行われているM&Aのおよそ70%以上は未上場企業や中小企業が関わっていると言われている。

統計上、出てきていない小規模なものも含めると、その件数はさらに増えるだろう。
つまり、日本国内で行われているM&Aの主役は中小企業だと言っても過言ではないのだ。

200万円でもM&Aはできる

実際の例をあげると、弊社では過去に譲渡額200万円の案件を手掛けたことがある。
ある人材紹介会社が、メイン事業以外の切り離しをしたいという相談に訪れたのだが、その譲渡したい事業というのが異業種であるイタリアンレストランだった。
上場するにあたり、経営戦略として本業と無関係の事業を譲渡するという決断に至ったのだ。

このように、M&Aというのは、単に会社を「買いたい(買収・譲受)」「売りたい(売却・譲渡)」という“目的”ではなく、さまざまな経営課題を解決できる“ツール”である。

現代の厳しい経営環境を生き抜くために、中小企業の経営者にこそ、M&Aという使い勝手のいいツールの活用を是非お勧めしたい。

(2)経営課題の解決に役立つM&A

自社で解決できない問題をM&Aで解決する

不況と言われて久しい昨今、「新しい事業分野に進出したい」「海外進出して新しい市場を開拓したい」という思いを抱える経営者は少なくない。

しかし、大企業であれば人員や人材が豊富なため、新規事業開発チームや海外事業調査チームなどを作って取り組むことも可能だが、少人数精鋭で経営している中小企業においては難しい場合が多い。

加えて、新規ビジネスの発想というのも簡単に思いつくものでもないし、海外とのツテもない、そもそもどうやって進めればいいか分からない…と頭を抱えている経営者も少なくないのではないか。

そこで、お勧めしたいのが、進出したい事業分野の会社・事業をM&Aする、という戦略だ。
会社(事業)ごと取り込んでしまえば、当該市場での実績やクライアント・取引先等も手に入る上、その事業に必要な設備・資産も獲得することができる。
さらに、当該事業に精通した従業員も確保できるというのが、中小企業にとっての非常に大きなメリットとなる。

M&Aを活用して優秀な人材を確保する

「優秀な人材の確保」は、中小企業経営者の悩みとして、常に上位にランクインしているが、人材採用だけではなく、「会社(事業)ごと取り込む」ことによって優秀な人材を確保するという方法も有効なのだ。

場合によっては、M&Aによって傘下に入った会社の従業員がとても優秀であったため、買収会社の役員に登用されたという例もある。

とはいえ、経営者にとってM&Aが人材確保や経営戦略として有効な手段だとしても、従業員にとっては、まさに青天の霹靂であり、ある日突然言い渡されるのだから、その衝撃たるや想像に難くない。受け取り方次第では、将来への不安から仕事に支障をきたす従業員も出てくるかもしれない。

当たり前のことだが、会社の収益を左右するのは一人ひとりの従業員の働きである。
M&Aを実施する際は、従業員への十分な配慮を忘れてはならないのだ。

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