M&A成功のポイント⑤大切なのは「アフターM&A」(後篇)

管理システムの統合と人的融合

アフターM&Aについてよく聞かれる言葉に「PMI(=Post Merger Integration)」というものがある。
「M&A後処理」とか「合併後の統合」とか訳されているが、要するにM&A後のマネジメントシステムの統合、企業風土や理念の統合といった部分の作業全般を指す。

以前手掛けたM&Aで、譲渡会社のDDを担当してもらった公認会計士事務所と弁護士に、M&A後もそのまま譲渡会社の顧問を継続して担当してもらったことがある。
DDの際に、譲渡会社の財務内容や契約関係等を十分精査・分析しているので、管理上の問題点を把握できており、新たに管理体制を構築するためのパートナーとして支援してもらった訳だが、買収会社の管理部長ともしっかり連携が取れていたこともあって、非常にスムーズにM&A後の管理体制整備を進めることができた。

中小企業の場合、元々管理体制は脆弱なことが多いため、M&A後も買収会社の管理レベルと合わせるためにかなり苦労するが、こういったPMIのプロに委託してサポートしてもらうのも検討の価値はある
(ただし、コストがかかるので丸投げは止めておいた方がよい)。

経営理念やビジョンの共有、社内風土や文化の統合といった部分もPMIの一部とされているが、
これらソフトの部分は時間をかけてグループとして作り上げていくものなので、既にしっかりした経営理念があり、社員間で共有されているなら、M&A後の統合プロセスで採用しているマネジメント研修や
社内研修に取り組んでいくことで、ある程度は対応可能だろう。

顧客創造とM&A

「顧客創造」という命題は、中小企業にとって非常に重要なテーマである。
顧客を増やしていくのは、M&Aを実行するための主要な目的のひとつであるが、実際にM&Aで会社を買収しても、意外とその顧客網を有効に使っていないケースが少なくない。

例えば、同業他社を買収した場合には、自社で保有している商品を新しい得意先へ向けて販売すればよいが、うまく販売が伸びていない会社の現場の対応から推察すると、あまり積極的に親会社の商品を取り扱おうとしてないようだ。
よく考えてみれば、買収された会社の営業マンとしては、今まで通り自分が販売している商品だけ売れればいいわけで、よほど良い商品でもない限り、M&Aされたからといって無理やり「新しい商品を売ってこい!」と命令したところで、頑張ろうという気にはならないだろう。

このような場合は、双方の持っている顧客リストを交換して、興味のある会社の担当者を紹介してもらって同行営業に行くなどの方法が考えられる。
自分の顧客を他の会社、しかも同業者に紹介するのは無理だが、M&Aにより同じグループ会社となった後なら双方の商品を紹介し合うことで、グループとしての売上高増加に貢献できる。
もちろん、グループ会社の売上実績に対応した社内的な評価システムの整備も必要になるので、
PMIにより営業マンの評価制度統合を行うのも有効ではないかと思う。

このように、M&Aを活用したグループ会社全体での「顧客創造」を行うことができれば、買収した会社の事業だけでなく、既存事業の活性化や売上増加にも繋がっていくため、
より大きな相乗効果も期待できるのである。

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