M&A成功のポイント④専門家を上手に使う(前篇)

公認会計士・税理士

M&Aを進めるあたって、M&Aアドバイザーは「M&Aの専門家」として、M&A情報の収集や分析、案件紹介と実行に関する実務アドバイスをしてくれる総合プロデューサーのような存在である。

しかし、M&A実行には、税務、会計、金融、法務に関連した専門的知識、労働者対応や社会保険の知識、不動産関連の知識、そして行政関連書類の知識など、実に多岐にわたる知識と具体的アドバイスやサポートが必要になってくる。

M&Aアドバイザーは全体をコーディネートして案件を進める役割を担う一方、個別専門知識や実務対応が必要な分野においては、その分野の専門家と協力して対応していくことになる。

まず、最初に重要なのが公認会計士と税理士である。M&Aの初期段階では、企業の価値や財務状況の掌握および分析が大切なため、各種財務諸表や資金繰り表のチェック、税務申告書のチェックを行う。

会社を譲渡したいと思った時に、公認会計士や税理士に依頼して簡易的なDDを行うこともある(売り手の詳細調査という意味で「セラーズ・デューディリジェンス」と呼ばれる)。

企業価値評価も通常は公認会計士事務所が担当する。

案件の中盤には、DDを実施して譲渡会社の内容を詳細にわたりチェック・分析してレポートを作成したり、終盤にはM&Aの譲渡条件修正についてもアドバイスをしてくれる。

このように、公認会計士や税理士は、M&Aの最初から最後まで網羅的に案件に関わっているケースが多く、M&A実務にも精通しているため、M&Aアドバイザーとして活躍している公認会計士・税理士も少なくない。

なお、税金に関わるアドバイスや税務書類の作成等は税理士(税理士法人)の独占業務なので、M&Aアドバイザーが行うことはできない点に注意が必要である。

また、譲渡会社の顧問税理士や公認会計士がM&Aを進める際に協力してくれると、M&Aを円滑に進めやすい、中小企業の場合、経理資料や財務関連の手続きを顧問税理士に一任しているケースが多いので、社長に財務資料の準備や提出をお願いしても、「顧問の先生に確認しないと分からない」というケースがかなり多い。

従業員に知られずに案件を進めようとすると、経理担当者にも秘密にして資料を集める必要があるが、普段任せきりにしているのに突然資料の準備を始めると、「何かおかしなことでも始めるんじゃないか」と余計な心配をされかねないばかりか、他の従業員にM&Aを進めていることを察知されてしまう可能性もある。

そのような事態にならないためにも、顧問税理士や経理担当者に任せっぱなしにせずに、普段から自分で会社の重要書類をこまめに確認する習慣をつけておいたほうが良いだろう。

ところで、顧問税理士や公認会計士に協力してもらうのは大切だが、「どのタイミングでM&Aを検討していることを打ち明けるか」は悩みどころである。顧問関係や会社の状況にもよるが、一般的には「DD実施のタイミング」が最も良いと思われる。

DDに必要な細かい経理資料や財務資料、税務申告に関するヒアリング、会社の収益状況や会計基準についてのヒアリングは、社長や経理担当者よりもむしろ顧問税理士の方が詳しく答えてくれることもある。

以前、私が担当したアパレル会社のM&Aでは、譲渡会社の顧問税理士が非常に紳士的かつ強力的に対応してくれたおかげで、いくつかのトラブルや問題解決もスムースに処理できた。

その結果、M&Aも成功したし、譲渡会社のオーナーもいい形で事業承継とリタイアができたのである。顧問税理士に救われた好例と言える。

しかし実際は、企業の顧問税理士の多くは記帳業務と税務申告を主たる業務にとしているため、M&Aを経験したことがある税理士はそれほど多いわけではない。

案件をスムースに進めるためにも、M&Aを依頼する税理士や公認会計士は、できるだけM&Aの経験がある先生を選ぶほうが望ましいだろう。

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