M&A成功のポイント③身の丈をわきまえる(前篇)

「無理をしない」が大切

M&Aの実行プロセスは非常に煩雑で手間がかかるが、実は規模の大小に関わらず資料分析や法定手続きは必要なので、小さい案件でもやはりそれなりに手間がかかる。そのため、「どうせ手間がかかるのであれば、規模の大きいM&Aをやりたい」と相談に来る経営者もいるが、企業規模に比べて「これはちょっと…」と思うような案件に手を出すのは、会社全体の経営効率やリスクマネジメントの観点から言ってもお勧めできない。

単純にM&Aと言っても、必要な資料は買収資金だけではない

買収に関連した様々なコスト(登記費用や各種事務手続き費用、専門家への支払報酬など)や、M&Aされた会社への運転資金投入も考慮しなければならないし、管理システムの統合コストも必要になってくる。

事業譲渡の場合はもっと大変で、これら買収関連コストに加えて、新しく会社を設立するコスト(新設会社で事業を譲り受ける場合)だけではく、事務所移転費用や事業用の運転資金も親会社が準備しなければらない。

うまくいっていない会社をM&Aする場合は、数年間の赤字を見越した資金計画を立てておく必要もある。引き受けてすぐ黒字化できればいいが、大半のケースではしばらく赤字が続くため、この分の資金負担も計算に入れておかないと、思わぬ出費に頭を抱えることになる。

また、親会社としては、子会社が増えるため管理人材の確保も必要となる。

独立独歩で稼いでいる会社を買収したとしても、親会社がしっかりしていた管理体制を敷いていないと、そもそもM&Aの目的が達成できてなかったり、統制が効かなくなって資金を不正に流用したり、親会社の意向通りに事業が行われなくなったりする危険性もある。

場合によっては、子会社の統治に人員を割かれ、親会社の滋養にも悪影響が出てしまうこともあるのだ。

このように、M&Aを進めるかどうか判断する場合は、買収関連の費用だけでなく、買収後に掛かる費用についても事前に見積もりをして、管理人材(取締役候補)がどの程度必要なのかについて、事前に十分考慮して総合的に判断することをお勧めする。

2008年に経営破たんしたリーマン・ブラザースの欧州・中東部門の買収額は、わずか2ドルだったという。

真偽のほどは不明だが、日本円で僅か200円足らずなので小学生のお小遣いでも買えることになる。しかし、買収と同時に高額年収の社員を大量に雇用したため、巨額の給与負担を抱える結果となったそうである。

200円なら小学生でも買えるが、億の単位での出費を負担するのは到底不可能だ。自分の身の丈と比べるときは、相手の全体像をしっかり確認することが肝要である。

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