M&Aアドバイザー活用法④

M&Aアドバイザーとの契約と報酬体系

みなさんも専門家を利用しようと思った場合、「どの時点から料金が発生するのだろうか」という疑問を持つことはあるだろう。

弁護士の場合は、タイムチャージ方針で相談時間当たりいくら、という報酬体系であるが、M&Aアドバイザーの場合はどうかというと、普通はM&Aの概要情報提供(企業紹介書レベル)や簡単な相談などの初期段階であれば当然無料で対応してくれる。

初期相談や紹介されたM&A情報に興味を持って、具体的に進めることになったら、その段階でM&Aアドバイザーと「アドバイザリー契約書」を締結するのが一般的だ。

アドバイザリー契約書の締結タイミングは業者や案件によってまちまちだが、対象会社名や財務情報、社内資料などの具体的情報の開示時点、またはトップミーティング時点としているケースが多いと思う。

M&Aアドバイザーに対する報酬にも様々なパターンがあるが、中小企業のM&Aの場合は、アドバイザリー契約書を締結した段階で支払う「着手金」と、M&Aが成功した際に支払う「成功報酬」の2段階で報酬を支払うパターンが主流となっている。

①着手金・・・具体的に案件を進めることになった際に支払う報酬。

「調査費」など別の名称が使われるケースもある。

M&Aがスタートすると資料の詳細な分析、説明資料の作成、企業価値や事業の内容分析、業界や関連企業、競合企業の調査、M&Aスキームの策定と進捗管理など、さまざまな業務が発生するが、この業務を行ったからと言ってM&Aが成功するわけではない。
つまり、案件成立を目指して、何十、何百時間この作業に時間や労力を費やしたとしても、そもそもM&Aが失敗してしまったら、報酬は一円ももらえないのである。

これら初期段階の作業に膨大な時間と労力を費やしてるM&Aアドバイザーにとって、報酬が全くもらえないとしたら死活問題になる。

そこで、作業に着手する段階で「着手金」という形で作業報酬をもらい、無報酬というリスクをヘッジしているのである。

この着手金はいわゆる作業費(通常は案件探索、事前調査・分析費用、アレンジ報酬も含む)なので、仮にM&Aが失敗した場合でも返還されない(作業に対する報酬のため)。

なお、業者によっては「完全成功報酬」として、この着手金を取らない場合もあるので、じっさいにアドバイザーを選ぶ際は、着手金の有無についても確認しておく方がよいだろう。

②成功報酬・・・M&Aが成功した場合に支払う報酬。

この場合の「成功」とは、譲渡契約書を締結した時ではなく、実際に譲渡が実行されて対価を支払った段階である点に注意。

この成功報酬の額がどう決まるかというと、一般的に利用されているのだ「レーマン方式」と呼ばれる報酬算定方法で、買収額(総資産額という場合もある)に一定の料率をかけて算定される。

このほかに、毎月固定金額を顧問料として支払う「リテーナーフィー」や、「基本合意書」締結時点を最初の成功ポイントとして認識して、「中間報酬(中間金)」を支払うこともある。

「中間報酬」は全体の成功報酬の10~20%程度を前払いで受け取るものなので、「成功報酬の分割払い」といった意味合いの報酬だ。

また、成功報酬の「最低保証金額」を決めているケースも多い。

M&Aの実行プロセスは小さい案件だからと言って楽ちんというわけではなく、細かい作業も含めて作業負担は大きい。

実は、小さい案件の方がオーナーの個性が強かったりするので、当事者間の条件調整に手間取ることも少なくないのだ。
個性的なオーナーに振り回されて、数カ月かけてどうにかこうにか最終段階にたどり着いたのに、譲渡金額が、例えば100万円となってしまった場合、先ほどの料率計算では100万円×5%=5万円の成功報酬にとどまることになる。
そこで、せめて作業人件費以上は確保しないと商売として成り立たないので、アドバイザリー契約書には「最低報酬は○○円です」と但し書きが入っているのが普通である。

最低報酬は、M&Aアドバイザリー会社の規模や方針によってまちまちだが、500万から2000万円程度に設定しているケースが多い。

契約する際には確認しておく方がよい。

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