最近、お客様より「あなたの会社を欲しい会社があります。一度お話しを聞いてもらえませんか?」という手紙やメールがM&A業者から来たという話をよく聞きます。
「え?ほんと?うちの会社を欲しいところなんてあるの?何でうちの会社を知ってるの?」と普通は思います。嘘と思い無視する方は多いと思いますし、怪しいと疑うことが普通ですが、大手M&A業者からそのようなレターが届けば、やっぱり経営者の立場からするとそんなこと言われたら気になりますし、しかも、後継者不在の会社なら尚更で一度話を聞いてみようとなります。
そのようなレターが来たら直ぐに相談を持ち掛けてくれればいいのですが、やはりそこは話を聞くぐらいならいいか・・となります。それは嘘か本当か?実はこの手のレターは嘘ではないですが本当でもない釣り営業が大半です。
常にM&A業者は、買い手の要望をヒヤリングしています。例えば、東京のお客様が広島に進出したいので広島の企業が欲しい、売上高は5億円程度で業種は●●というニーズを絶えず様々な業種の買い手候補より収集しており顧客ニーズのリスト化はしていますし、担当者は常に売り案件を探しています。もちろん、売り手の情報は自分の足で稼ぐことが基本であらゆるネットワークを駆使しお見合い相手(売り案件)を見つけたいと思っています。
しかし、売り案件がないとお見合いも成立しないのがM&Aですから、DMにより売り案件を見つけたいと考えるM&A業者も近年増加しています。そのDMの内容が先に言ったように「あなたの会社を欲しい会社はあります!」という内容、ご丁寧に毛筆で書かれているケースも、よく見たら達筆ですがコピー(笑)・・・
M&A業者は絶えず買いニーズをストックしていますからその条件に見合った会社をランダムにピックアップしてDMを送る、釣りで言いますと引っかかったらラッキーなんですね。これが嘘ではないが本当だと言うことです。
ピンポイントで送っているのではなく、条件に見合った会社へ全体に網を掛けているのです。もちろん、買い手企業からピンポイントでリストアップされM&A業者が間に入り話をすることはあります。この場合は、直接この会社が欲しいという本気度はありますが、当たってから買いニーズに持ち込むということがDM営業では大半です。会ってもない人に手当たり次第にDMを送りあなたと結婚したい人がいますという話は信用できますか?しかも、買い手企業もその会社に打診するとは知らずにです。
でも、会うぐらいならいいか、一度話を聞いてみようか・・・確かに買い手のニーズはあるので何なりと言えますよね。
「上場会社の某企業があなたを欲しがっていると・・・」上手い営業マンもいますので慎重に対応してほしいと思います。中にはその買い手は良く知っている取引先でタイミングが良かったみたい話もありますが、自分の会社を売却するということは娘を嫁に出すぐらい複雑な気持ちになりますよね。それを意図も簡単にDMだけで話をしていいのでしょうか?
実際、DM営業で話に乗った経営者の話によれば、「良い話しかしないので本当か?でも、広告でよく見る大手のM&A業者だし、買いたいと言っている会社も担当者の話によれば信用できそうだし、後継者もいないのでちょっと話を前向きに聞いてみようかと・・・ではどのように進めればいいですか?」と聞いたところ、「これ以上進めるためには着手金200万円が必要です。」と言われたと。え?そんなにいるの?だったら止めておくわ・・・そうならないケースは、何もM&Aのことを知りませんし、実際、会社の売却など検討もしていなかったけど、もしかしたらこれは神の思し召しかもしれない、こんな重要な話は誰にも相談できない、無知故に、あーそうかM&Aをするにはそれぐらいのコストが掛かるんだとなってしまう。
M&Aをする場合、売り手は慎重でなければこのような釣り営業に引っかかってしまいます。何度も言いますがそんな簡単に結婚相手が決まれば苦労はないです。もちろん突然の出会いで一目ぼれはありますが何も見ていない状況で想像だけで進むことは危険すぎます。検討する良いきっかけを与えてくれたぐらいに思う方がいいでしょう。そのきっかけによりM&Aに向き合い、自身の会社の価値や、どんな会社に買収されたいかなど様々な条件を検討する機会になればと思います。
最後に、M&A戦略は買い手、売り手にとってもこれからの時代必要不可欠ですが、悪質なDM営業には引っかからないで欲しいと本当に思いますし、そのためにも普段からM&Aの知識を身につけていただきたいです。
一番は、信頼できるM&Aを相談できる相手を見つけておくことが転ばぬ先の杖になると思います。
執筆者:島田 健作(しまだ けんさく)
株式会社ホワイトクロス代表取締役 / 株式会社オプティアス執行役員
M&Aアドバイザリー業務、事業再生を手掛ける。
中小企業再生の社会的意義に注目し、再成長戦略の策定と実行により、企業の再成長の支援をしている。