インド洋をめぐるエネルギー安全保障
2030年以降、インドのエネルギー需要の拡大は世界で中国に取って代わると見られており、インドのエネルギー安全保障確保のためには再生可能エネルギーの発展が非常に重要となっています。一方で、現在、石油の85%又はガソリンの50%を輸入するインドにとって、海運要所が所在するインド洋は国家のエネルギー安全保障における最重要地域です。
そのため、インド洋地域における中国の影響力の高まりはインドに対して直接的な脅威となっています。
中国は今年11月に「中国インド洋地域フォーラム」を提起し、同会議にはインドを除くオーストラリアから東・南アフリカまでインド洋地域の19ヵ国の代表が出席しました。中国がインド洋における影響力を強化することで、”インド洋はインドの領域ではない”又は”南アジアはインドの影響下の地域ではない”というメッセージを世界に発信することを意図したものと考えられます。
中国の一帯一路に対抗するインド
インド洋・南アジア地域で中国が現地政府又は港湾等のインフラ設備に対し軍事的・外交的な影響力を高める「一帯一路」の取組みに対し、インドは可能な限り対抗しています。その一環として、インドも南アジアとインド洋におけるインフラ融資活動を拡大しています。2014年にモディ首相が就任して以来、前の8年間に比べると融資額が3倍に増大し、330億米ドルに達しています。
一方、一帯一路の取組みが導入されて以降9年間に中国からの融資額は85百億米ドルに達すると推測され、インドと比較すると遥かに大規模になっています。
さらに、モディ政権はアクト・イースト政策を掲げ、インドと東南アジアそして日本へつながる陸海路としてインド北東部の開発、東南アジア諸国そして日本との関係強化に努めてきました。
日本との戦略的パートナーシップ
日印両政府は”自由で開かれたインド太平洋”を実現する上でお互いが重要なパートナーであるという認識に基づき、2022年3月の岸田首相の訪日を機に『日印クリーンエネルギー・パートナーシップ』を発表した他、今後5年間で日本の対印投資額を5兆円とする目標を掲げました。インドの環境保全や対印投資の促進に向けた協力が進んでいく予定であり、インドのESGの発展は日本企業にとっても大きな機会(ビジネスチャンス)を提供する側面を持っています。
執筆者:阪口 史保(さかぐち しほ)
Hoshitry Impact 代表パートナー
投資ファンドにて13年間にわたり、投資育成、ファンド設立に携わる。
現在はインドと日本を結ぶコーディネータとして、日本企業の事業開発を伴走型で支援。
南インド・バンガロール在住。