「経営者」について

弊社は創業支援から「経営者の駆け込み寺」と呼ばれる中小企業活性化協議会、俗に言う「協議会案件」まで手広く扱っていますが、実際には後者の事案の持ち込みが多い会社です。実に様々な事案が持ち込まれますが、昨今、気づいたことを書かせて頂きます。今回は「経営者」についてです。

1.自省の無い経営者

コロナ、原材料高、円安・・経営悪化の原因は全て「外部」であり、「私には非はない」とのたまう経営者が散見されるようになりました。同じ環境でも堅調に業績を伸ばす企業がある中で、外部環境が問題の根幹だとすれば、差が生まれるはずはありません。「全部自分に責任が・・」とは思わないのですが、自省の念が無い事業者の方が本気で改革に乗り出すことはめったにありません。反省が無ければ問題点を洗い出し改善するというプロセスが踏めないからです。

2.自社の状況を客観的に理解できない経営者


最も簡単に自社の「ヤバ度」を把握する方法、それは「現預金の増減」です。昨年より今年の現預金が減り、かつ連続して減少している場合、それはキャッシュ創出能力の低下を意味します。P/Lはごまかしが効きますが、B/Sは効きません。その指摘をしたら、「銀行がカネ貸してくれないからだ」と返してきた社長さんがいましたが、失笑してしまいました。
まあ、この社長にはカネ貸さないわな。

3.数字に弱い経営者

行政に紹介され、初めてお会いするときに聞くことがあります。「御社の損益分岐点売上はいくらですか?」。即答できれば改善可能性は非常に高く「なんすかそれ?」と言葉の意味すら分からなければ、アウトの可能性が高い。この損益分岐は経営者の「質」を見極める非常に精度の高いセンサーです。
どんな悪たれを突くヘタレ社長であってもこの質問が正解だった場合、私は一肌脱ごうと思ったりします。消費税と社保の滞納常連の会社さんがありました。
80越えのおじいちゃん経営者だったのですが、損益分岐売上を完璧に計算し、その精度はお見事。
しかし、彼が第一線のころは消費税自体が無く、社保料も全然低かった。
単にその2つが頭に無かったので、滞納が常習化したというわけです。数字は良くも悪くも正確に状況を捉えるものです。あるコンサルが「経営者は数字を気にしてはいけない。強い想いがあればよい」みたいなこと言ってましたが、冗談じゃないと思います。中小企業は社長の器量が全てであり、社長がポンコツだと会社のポンコツになってしまいます。微分積分を解きましょう、と言ってるわけではありません。最大限の関心を持ち、真摯に数字に向き合いましょう。

4.「自分の会社でしょ!」と思わず突っ込んでしまう経営者

事業承継あるある、かもしれませんが、経営を承継させようと任せたのはいいが、やることなすことケチを付け、後継者の邪魔をするお父さん経営者が結構な数いらっしゃいます。昔から聞くことですが、官民総出の承継ブームの醸成で絶対数が増えたのと、承継年齢が上がり更に頑固オヤジになったからだと私は推測しています。どう考えても後継者の案が優れてるのにそれを承認しない。理由は「俺のとは違う」。
そこで一言。「あなたの会社でしょ!親子で潰しあってどうする」改善策としては、もっと早い段階で承継意識を醸成する事かと思います。

5.覚悟の無い経営者
 多額の借金は「親の代で作ったものなので、私のせいではない」。でも「事業はおもしろいので経営は続けたい」
カネがないので資産を売りましょう。「いや、代々先祖のものなので売りたくない」。資金繰りが厳しいので保険解約しましょう。「いやあ、その保険屋さんにはお世話になって。」じゃあ、どないすんねん。
 そういう経営者に限って、「いつでも潰してやりますよ」とか強がったりするのですが、「イメージしてください。社長がその年で、慣れない仕事で勤め人する姿を」

とコスリをいれると言葉が続かなかったりします。経営において最悪を想定することは、リスクとリターンを見極める上でもとても重要なことです。その最悪の想定に至っても受け入れられる、大丈夫と思える「覚悟」があると、痺れる状況下であってもしなやかさを失わず、耐えることができます。
以上です。機会があれば、ステークホルダー、特に金融機関について書いてみたいと思います。

執筆者:山田 仁浩(やまだ きみひろ)
フィネスコ株式会社

15年間の銀行勤務と、7年間の投資銀行勤務を経て、2011年「中小企業が気軽に使えるFAS」を目指し当社設立。法的・私的を問わず、ほぼ全ての事業再生策の実戦経験を持つが、本業は「そこまで行かせない経営手法の提案と実践支援」。家族4人のうち3人が社長の肩書を持つ「経営バカ一家」の家長でもある。

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