今回から“人材“という観点で『M&Aが成功するということ』を考えてみたい。
M&Aの目的の1つに人材の確保がある。優秀な人材、重要なスキルを持った人材を一気にグループの仲間に向かい入れることができるということは大きなメリットである。
しかし、重要な人材をそのまま流出させないということは、思いのほか難しい。設備や機械等の固定資産は経営側が売却・処分を考えない限り、無くなってしまうことはないが、人材は経営側がどう考えようが、彼らにとって会社の変化が耐えがたいほどのものであれば、『退職』という選択をしてしまうことが多いからだ。
子会社となる会社には、後継者問題だけで無く、経営不振の場合も多い。このような子会社を仲間にむかい入れる場合、親会社は当然のように1日も早く子会社の経営を立て直したい。『赤字体質を改善したい、管理業務が根付かせたい、製造現場の無駄をなくしたい』等々、親会社のやり方でとにかくスピーディーに変えていきたいのである。
しかし、このような場合は注意が必要だ。子会社の従業員の方々(特に幹部・管理職)は、M&Aの後は不安で一杯であり、『自分達はどうなってしまうのだろう』と相当神経質になっているからだ。定期的に配置転換(変化)がある大企業と異なり、中小企業は社長、上司、所属部門が変わることはほとんど無く変化に慣れていないので、無理もないのだ。
このように従業員の方々が神経質になっているときに、改革・改善を急いでしまうと、『もうここでは無理、やっていけない』となってしまい、上位の階層の人からやめることになってしまう。上位の階層の人が辞めてしまうと、その組織は精神的な支柱をなくし退職者が続出してしまう。
だから・・・絶対に焦ってはいけない。
M&Aを成功させるには、会社の状況(個々の従業員組織の状況)を的確に見極めた上で、改革・改善・教育などを始めなければならない。
人材的にM&Aを成功させるためには、まずはこの点をしっかり理解していただきたい。(No5に続く)
栗原 正幸(くりはら まさゆき)
ビジネスサポート HANDS ON 代表
経営者向けコンサティング業務(経営計画策定及び実施サポート、財務コンサルティング)
人材育成コンサルティング業務を行っている。クライアントの成長を第一に考える。