M&Aの現場から⑥「君たちはM&Aアドバイザー、コンサルタントをどう使うか~ビッグモーター事件に思うこと~」

皆さんこんにちは!オプティアスの萩原です。
最近巷で大きな注目を浴びている中古車販売大手の株式会社ビッグモーター。車両を故意に傷つけて修理代を水増し請求したとか、リサイクル品を「新品交換」と偽ったとかちょっと耳を疑うような事実が話題となって、連日ワイドショーでも取り上げられています。
こういった不正行為の原因として、過度なノルマや懲罰(降格)への恐怖心といった経営管理上の問題が指摘されていますが、この会社が、かの有名な経営コンサルタント小山昇氏(株式会社武蔵野)の経営指導を受けていたという事実もネットを中心に話題になっています。同社は昨年4月に沈没事故を起こした有限会社知床遊覧船にも経営指導をしていたため、「同社(同氏)の指導手法がもう時代に合ってないのでは?」という指摘もあります。
実際、就業時間前に清掃作業を(実質)強制する「環境整備」は、昨今の労働環境改善の流れとは逆行してますよね。
一方で、長きに亘って日本のトップコンサルタントとして数多の中小企業の経営改善実績があるのも事実だと思われます(個人的に小山氏の指導を受けた会社を知らないのであくまで推測)。ここで注意すべきは、コンサルタントというのは「魚の釣り方(やり方)」を教える人で、「魚そのもの(結果)」をくれる人ではないという点です。コンサルを受ける人(会社)はあくまでもやり方を教わる訳で
本来はそのやり方を自社の環境にカスタマイズして使うべきところ、過度に「レディーメイド」的に渡されてしまうと遊び部分(カスタム可能部分)が少なくなって、自分で「考える(工夫する)部分」が無くなってしまいます。

考える部分が無くなるとどうなるかというと、「型にはめて運用する」ということ、それ自体が目的化していきます。M&A思考でも再三注意喚起をしている「ツール(手段)の目的化」です。これは経営者だけの問題ではなく、従業員の立場でも同様で、上司の指導や命令の「本来の目的(意図)」は何か?を考えるよう適切に指導していかないと、将来的に組織全体が予期していない方向にドライブしていく結果に繋がりかねません。
会社の経営は、人間同士が意思の疎通(コミュニケ―ション)によって連携することで、個人では出来ない大きな事業を実行していくことに他なりませんが、このビッグモーター事件は、組織の意図(目的)を構成メンバー全員にしっかり浸透させることがいかに大切かを改めて考えるきっかけにもなりました。

翻って、我々M&A業界はどうなっているでしょうか?事業承継を始めとする経営課題解決の手段としてM&Aを駆使して「顧客の課題解決」をするのが私たちの使命です。しかし実際はどうかと言うと、コンサルタントとして本来の目的に適った手段(M&A)を使っているかというと、必ずしもそうではないことも、あります。M&Aアドバイザー(FA)の業務は、一般的なコンサルタントと違って「やり方を教える」よりむしろ
専門家としてM&Aを成功に導く助太刀をする仕事なので、経営者がM&Aアドバイザーにしっかり目的を伝えておかないと、やらなくてもいいM&Aをやらざるを得ない羽目になり、結果的に「やらなきゃよかった、こんなM&A」という失敗に繋がってしまいます。
記憶に新しいところでは、M&A業界の最大手、日本M&Aセンターで2021年末に発覚した売上の不正計上事件も本来は顧客の課題解決(事業承継や事業拡大等々)の手段であるはずM&Aが、いつの間にか「M&Aの遂行=売上達成」というM&Aアドバイザーにとっての必達目標にすり替わるという、本来の目的(顧客の課題解決)から逸脱した「ツール(手段)の目的化」によって引き起こされた問題といえます。

M&Aアドバイザー(FA)や経営コンサルタントがいかに優秀でも、経営者自らがそういった専門家を「使いこなす」側に回らないと、言われるままの言いなりになって、結果的に思考停止に陥って、レディーメイドの型にはまる方法を繰り返すという「手段の目的化」に陥ってしまいます。
そうならないために経営者に必要なのは、自らの目的に適ったノウハウを吸収して実行していくことなので、専門家を使いこなすための知識や情報力を身に着ける努力を続けていくのが大切です。
M&Aの技術・ノウハウ習得は勿論、ビジネスリベラルアーツの習得や様々な情報収集も必ず「考える」ための一助となりますので、今後もしっかり一緒に学んでいければいいなと思います。

萩原直哉
株式会社オプティアス代表取締役
中小・零細企業を専門としたM&Aアドバイザー。大手信用調査会社の調査員として延べ1,500社を超える企業の経営者と面談した経験を活かした「中小企業経営者・オーナーの目線に立ったM&A」がモットー。

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