中小企業のESGの取り組み状況

中小企業も実はESGに既に取り組んでいる!

M&A思考養成講座では、ビジネス・リベラルアーツのなかでESGに関するテーマを取り上げておりますが、「中小企業にとってESGがなんの関係あるの?」という思いを持っている方も少なくはないでしょう。
商工中金が、2022年10月に「中小企業のESGへの取り組み状況に関する調査(2022年7月調査)」を発表しました。有効回答数は5231社と、サンプル数としてはまずまずですから日本の中小企業の実態を表すものと言えるでしょう。

同調査によると、ESGのなかで最も高い割合で取り組まれている分野は「S.社会」に関する「残業時間の削減や有給休暇取得促進などの労務環境対応」で、回答企業の87.5%が取り組んでいるという非常に高い割合となっています。
これは、割増残業手当の規制や有給取得の義務付けといった“働き方改革”や求人難や若者の労働意識の変化など社会情勢に対応した企業行動の変化と理解できます。
このほかでは、「G.企業統治」では「月次決算のスムーズな作成など財務・会計管理体制整備」が83.5%と高い回答結果となっています。
全般的には、「G.企業統治」の分野が最も高く、「S.社会」や「E.環境」への取り組みがやや遅れているという印象です。
「E.環境」の「脱炭素への取組・自社のエネルギー消費量削減等のエネルギー対応」に取り組んでいる企業は37.8%と高い印象を受けられるかもしれませんが、省エネ機器やデマンドコントロールなどの導入、ムダ・ムラ・ムリの排除など日常的な取り組みは日本企業が得意とするところです。
逆に、一つも取り組んでいない」という企業は2.9%と少なく、中小企業も何らかの形でESGに取り組んでいると言ってもいいのではないでしょうか?

今後最も注力したい分野は環境面での付加価値の訴求

今後最も注力したい分野としては、「E.環境」の「自社製品・サービスの環境面での付加価値の訴求」がもっとも高いという結果(17.6%)がでました。
M&A思考養成講座でもよくでてくる「カーボンニュートラル」や「省エネルギー」という文脈で読み解けば中小企業経営者が「環境面での付加価値の訴求」が今後最も注力すべき分野と認識しているのもうなずけます。取引先や消費者における環境対応ニーズの強まりという趨勢を、いち早くとらえる動きと解釈できます。
 「脱炭素への取組・自社のエネルギー消費量削減等のエネルギー対応」は、今後最も注力したい分野としては10.3%程度にとどまっています。経営における優先度はまだ低いという結果となりました。
 既に「脱炭素への取組・自社のエネルギー消費量削減等のエネルギー対応」に取り組んでいる企業のう
ち、自社の排出量の測定をおこなっている企業は20.8%、CO2削減目標を設定している企業は12.0%となっています。

環境面での付加価値の訴求を成長ドライバーとする事例

中小企業の事例ではありませんが、工作機械大手のオークマは、サーモフレンドリーというコンセプトの省エネ性能を強みとした工作機械で好調だそうです。
2023年1月の工作機械業界の受注額は前年同月比でマイナスとなるなか、オークマは逆に8.9%増とな
り、2023年3月期の連結純利益は過去最高を見込んでいるそうです。
サーモフレンドリーの技術開発が始まったのは、なんと30年前でバブル景気が弾けた1994年に遡るとのこと。工作機械市場が急激に縮小する中、研究開発部門も人員削減されたのですが、「顧客の声」を聞く中で工場の現場が「熱問題」に苦労しているのを知り、「熱対策」に研究テーマを定めたそうです。
高い精度が求められる金属加工では工場環境の熱変化におおきく影響されるのですが、工作機械の膨大なデータを収集・分析し、機械そのものが温度変化に対して変形するように設計されたサーモフレンドリーコンセプトの工作機械を開発。

2023年からは熱変化に対して工作機械を自動制御する「グリーンスマートマシーン」(消費電力31%削減)としてブランド化するそうです。2022年10月には、国内3工場を再生エネルギー利用によりカーボンニュートラル工場として工作機械を生産しており、脱炭素を強く押し出しています。
最新の機械は、日本メーカーよりも中国メーカーにたくさん売れるそうで、それはそれで複雑な気持ちにはなりますが。
中小企業においても、大川印刷が脱炭素を打ち出して業績が伸長するといった事例もありますので、こうした取り組みが今後ますます重要となるでしょう。

執筆者:M&A思考事務局
「会社と会社をつなげて課題解決をすること」
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