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M&Aの実行手順②情報入手後の流れと秘密保持

情報入手と秘密保持契約

M&Aアドバイザーや銀行などの外部機関に依頼して、目的に見合った会社や事業の「売却情報」を入手したら、最初に「企業概要書」(「案件情報」や「企業情報」など、会社によって名称はさまざま)と呼ばれる資料を提示されることが多い。この「企業概要書」には、会社の所在地域や業種、過去の業績や会社の特徴、売却の理由や条件、といった内容が記されているため必要最小限の情報開示を目的としており、社名はもちろん、会社を特定できるような情報は記載されていない。

この開示情報を参考にして、案件として進めるために追加の情報要求や質問をして、ある程度進められる見込みがありそうなら、漸く対象企業の詳しい情報を提出するよう要請することになる。

 

これらのM&A情報は企業の命運を左右するほどの重大情報であるため、具体的な会社名や内容を第三者に開示(「ネームクリア」という)するのは非常に大きなリスクを伴う。そこで、このような会社の重大情報を開示する場合、情報開示社と情報受領者間で、開示情報の秘密保持を目的に「秘密保持契約書」を締結する(通常は「NDA=Non-Disclosure Agreement」または、「CA=Confidential Agreement」という略称で呼ばれることが多い)。この契約は「この情報は秘密情報なので、我々以外の第三者に無断で情報を開示して相手が損害を被ったら賠償します」という内容なので、情報を誰かに漏らして損害が発生しない限り、契約をしたからと言って何かしらの費用が発生するという種類のものではないが、双方が「守秘義務」を順守する体制を整える(精神的に縛りを入れる)という意味で極めて重要である。

 

入手情報のチェックポイント

M&Aを実行する場合に必要となる資料は進行段階により徐々に増えるが、検討段階でそろえる必要があるものは概ね次の資料と考えておいてよい。

 

①商業登記簿(法務局で入手できる。現在の状況が記載してある「現在事項証明書」と、過去の役員や増資の履歴まで記載してある「履歴事項全部証明書」がある。M&Aの場合は後者が必要)

②定款(会社の憲法といえるもの。変更している場合、最新のものが必要)

③過去3期分の税務申告書(決算書だけでなく、決算書の各科目内訳がわかる付属明細も必要となる)

④会社案内(事業内容や特徴が記してあるので、会社を理解するのに役立つ。最近はホームページでも代用可)

⑤試算表(直近の決算書から日数が経っている場合、現状の財務状況を把握できる資料が必要)

⑥株主名簿(株式譲渡の場合、過半数を得られるかどうかチェックする必要がある)

 

なお、不動産リスト、従業員の資格状況など、場合によっては他の資料が必要になることもあるので、その都度資料請求をして提出してもらうが、あまりこまごまとした資料を何度を請求すると相手も大変なので、ある程度まとまった形で資料提供してもらうことが多い。これらの検討段階で提出してもらう資料を「インフォメーションパッケージ」と呼ぶ(通常、ファイル一冊分くらい)。

 

次に資料のチェックポイントについては、概ね次のような点を確認しておく。

 

①商業登記簿・・・発行済み株式総数と株主名簿の株数が合致しているか、代表者が頻繁に変わっていないか、役員構成に特徴(同族が多いなど)があるか、ストックオプション条項等特殊な条件の登記がなされているか。

②定款・・・機関設計(取締役会の有無など)、取締役会や株主総会の招集方法や規定、退職金の規定、その他特殊な規定がないかどうか。

③税務申告書・・・見るところが盛りだくさんだが、基本的には次のポイントは最低限把握しておくほうが良い。

○貸借対照表―資産科目の推移と妙な科目がないかチェック(過去3期分を比較して、売掛金・商品等「妙に増減している資産科目」がないか、純資産の増減状況、有利子負債の金額の増減状況)

○損益計算書―収益力の推移をチェック(粗利益率・営業利益率の推移、減価償却費の推移、販売管理費内訳で妙に多い費目がないかなど)

○付属明細―気になる科目のチェック(代表者・子会社貸付、未払金や未収入金など)

○累積損失―計上時期と金額をチェック(一定期間内の欠損であれば損金算入できる)

○役員報酬の金額―退職金の算定や修正損益作成に必要

 

細かい内容についてはデューデリジェンス(詳細調査)を行う際に確認すればいいので、ここでは対象会社の収益力や資産状況、問題点や魅力がある点の把握を中心に、全体像を把握しておくことが重要と言える。