組織の成長はトップから

前回、M&Aを行うと『人材の問題が、後を引くこともある』というお話しをさせて頂いた。加えて、まずは親会社の従業員教育が必要である旨も書かせていただいた。
この回では会社(組織)の従業員教育について話を進めていきたい。
会社組織では、経営者クラス→幹部・管理職クラス→一般社員クラス→パートアルバイトクラスという順番で研修等を進めていくことが必要である。
間違っても下位から上位に向けて研修等を行っては、いけない。なぜならば、下位の従業員から研修等を行ってしまうと、一時的ではあるが下位の者が上位の者を追い抜いてしまう感じになってしまうことが、あるからだ。そうなった場合どのようなことが起こるか?
部下が上司に対して『そんなことも知らないの!』
『意識低いな!』『もう少しやる気出して欲しいな』等々のマイナスの感情を抱いてしまうことが起こりやすい。
私がコンサルティングの仕事を本格的に始めたころ
(25年くらい前)の話しだが、ある会社の経営相談を行っていた時のこと、クライアントの社長より『従業員教育をして欲しい』と依頼を頂いた。
すぐに自社のボスに相談しクライアントに提案した。
あまり経験が無かった私達は、その時はクライアントの社長さんの言うがままに“従業員(幹部・管理職)だけでの研修”にしてしまった。
研修は各テーマの専門家を招聘し、なかなか内容の濃い良い研修であったと思う。当時としては珍しく、双方向のコミュニケーションを非常に意識した研修で、参加者が目に見えて積極的・自発的に変わって行ったのが分かったほどだ。
研修終了後半年くらい経った時、実施中には想像もしない問題が起きてしまった。
それは、幹部・管理職の約半分が退職するということになってしまったのだ。
このようなことになり、私は慌てて慰留の意味も含めて研修参加者(且つ退職を希望している人達)に退職理由を聞きにまわった。
そうするとほとんどの人が『経営者に対する不満』を口にしたのだ。
それはどういうことかと言えば、知識・意識がとても高くなった研修参加者が、経営者をリスペクト出来なくなってしまったのだ。
『この経営者について行っていいのだろうか??』と本気で考えてしまい、『転職するなら今がラストチャンス』という感じになってしまったのだ。
この時に私達は猛省した。社長の依頼であったとしても、会社の状況を十分に考慮して、研修を行うべきであったと。社長がなんと言おうとも、社長も参加して頂けば良かったと。
この経験をした私は、それからは常にこのことを考えながら企業の人材育成プランを考えるようにしている。
『組織の成長はトップ(もしくはトップも一緒に!)』からということを思い知らされた出来事であった。

執筆者:栗原 正幸
ビジネスサポート HANDS ON 代表
経営者向けコンサティング業務(経営計画策定及び実施サポート、財務コンサルティング)
人材育成コンサルティング業務を行っている。クライアントの成長を第一に考える。
