M&A現場リポート③自己破産からの復活劇(前)

2018年09月17日更新

M&A

※実話です。

▶激動の3.11

前回の現場リポートでは、自己破産を回避して民事再生を選択し、 M&Aで事業と従業員を救った事例を紹介した。 自己破産とは、文字通り自分で裁判所に破産申し立てを行うことだが、 会社が自己破産すると事業を停止して従業員を解雇してしまうため、 取引関係も全て消滅してしまう。 一部事業や従業員だけでもM&Aで移管したいところだが、 ほとんどの場合、事業を停止した時点で事業の価値が大きく棄損するため、 第三者が引き受けても事業そのものには既に価値がないケースが大半である。 個人的な能力が評価されて取引先に引き抜かれたり、すぐに再就職ができればいいが、 従業員の多くが突然路頭に迷ってしまう可能性が大きいため、 経済的損失も大きい。 2011年3月11日。多くの尊い人命を奪った東日本大震災が起こったその日、 我々は東京の事務所で埼玉県秩父市からのお客様を待っていた。 秩父市で長年織物の染色やプリントを手掛けてきた 山本織物化学整染の山本英司社長である。 山本社長とは、知人の紹介で2010年末頃知り合い、 当初は事業提携相手を探してほしいという要望だったため、 電話で状況のヒアリングをして資料を送ってもらい、 まずどういった対応をするかを検討していた。 山本社長の話では、近年プリントや染色のような仕事は 中国にどんどん奪われてしまって売上も落ち込み、 経営が苦しい状況が続いており、 自助努力だけではなかなか挽回が難しいとのこと。 確かに当時の身の回りの衣類は「メイド イン チャイナ」がほとんどで、 国産の衣料品のシェアは大幅に減っていた。 そこで、この会社ならではの強みを活かして 差別化が可能な商材や技術はないのか聞いてみると、 なんと秩父でしか生産していない「秩父ちぢみ」の加工を手掛けることができる最後の一社だという。 「ちぢみ加工」というと、新潟の「小千谷縮」が有名だが、 絹を燃糸で加工する小千谷縮に対して、 秩父ちぢみは綿を使っている点が特徴。 高級感には欠けるが、寒中晒しという真冬にしかできない加工法で風合いは涼しく、 座布団カバーやのれん、寝具などに多く利用されている。 そんなすごい技術があれば生き残れるだろうにと思ったら、 この技術による売り上げはそれほど多いわけではないく、 ほとんどがプリントや染め物で事業が成り立っているという。 いくら特徴がある技術があっても、主力事業がじり貧では確かに苦しい。 色々議論した結果、やはりスポンサーを見つけて M&Aによる生き残り戦略を実行するしかないという結論に至った。
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