2018/08/27

M&A現場リポート①怒鳴る社長と泣く社長(後)

※実話をもとにしたショートストーリー

▶焦りと緊張

その日、電話口の佐藤社長はいつもの大人しい話し方ではなく、 若干イライラした口調だった。 進捗状況が遅れているのが不満らしいのだが、 相手のいることだからしょうがないと言った途端、 「なんで予定通り進まないんだ。もう見送る!」と 突然電話越しに怒鳴りつけてきたのだ。 タイムリミットと決めていた3月末はとっくに過ぎ去り、 すでにゴールデンウィーク目前。 ようやくまとまると思っていた小松マテリアルとの交渉にも 時間が掛かっていたため、緊張感もマックスだったのだろう。 しかし、ここで投げ打ったらこれまでの努力がすべて水の泡だ。 今更あとには引けないのは佐藤社長も重々承知なはず。 にも関わらず一方的に罵詈雑言を投げつけてきたのだ。 しかし、緊張感マックスなのは我々も同じこと。 最初はなだめていたのだが、あまりに一方的な電話に、 「だから話を聞けって言ってんだよ!」と、 よせばいいのに怒鳴り返してしまった。 電話を切られようがお構いなし。 こっちも火がついたので、再度かけなおして怒鳴り散らす。 頭の隅で「あー、なにやってんだろう」と思いながらその後数分間、 大人とは思えない怒鳴り合いが続いた。 ところが「やり方が悪い」だの「その口のきき方はなんだ」だの 散々言いたい放題言い合うと、不思議と冷静になり、 お互いガソリンが切れかかったところで、 「とにかく頑張ります」「こちらこそ、よろしくお願いします」と 言い合って電話を切るに至ったのだ。 双方とも真剣に取り組んでいることが認識できたからなのか、 この一件以降、以前にも増して意思の疎通が図れるようになり、 佐藤社長も以前のような優しい対応に戻っていった。 そして、5月中旬。ようやく条件合意に至り、 めでたく株式譲渡契約書を締結し、株式譲渡も滞りなく実行され、 M&Aもめでたく完了するに至った。

▶感謝の涙・・・やってて良かった

その後、佐藤社長とは報酬の受け渡しや、 残務の打ち合わせなどで数回顔を合わせたが、 典型的なゴリラ顔だったその顔からは剣が取れて、 晴れやかなチンパンジーのようにやさしい表情になっていた。
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