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M&Aの実行手順④企業価値の評価「DCF法」

 

<経営戦略としてのM&A>(14)M&Aの実行手順④企業価値の評価・後篇

▶企業価値の評価方法「DCF法」

 

前回紹介した「時価純資産法」と同様に、M&Aの現場でよく利用されている企業価値算定方法が「DCF法(ディスカウンテッドキャッシュロー法、または割引キャッシュフロー法)」だ。「年買法」に似ていて、将来予想される事業収益をベースに企業価値を評価するのだが、その金額算定の考え方に「現在価値」という概念が導入されている点がこの算定法のポイントである。

 

例えば、ある債権を買うとした場合、「1年後に1000万円、または今すぐに990万円ではどっちが得か?」と問われたら、どちらを選ぶだろうか。経済見通しが不透明な昨今、感覚的には今すぐ欲しいので990万円を選びたくなりそうなものだが、この条件を「年利1%で1年後に1000万円となる債権、または今すぐ990万円のどっちが得か?」と変えたとすると、実はどちらも同じなのだ(1000円未満、税金は未考慮)。

 

例えば、1000万円で会社を設立し、1年後にこの会社が10万円の利益を上げると予想される場合、1年後に1%の利益が加算されることになるので、この会社の1年後の価値は1010万円である。では、「1年後に1000万円になっている」企業の現在の価値はいくらいなるかというと、1%の利益が出ることを前提とすれば、1000万円を1%で割り引けば求めることができる(1000万÷1.0=990万円)。

 

要するに「1年後の1000万円は今の990万円」ということなのだ。この990万円こそ、1年後の1000万円の現在価値である。同様に2年後、3年後…という風に毎年積みあがる利益を、年度ごとに当該企業状況に合致した割引率(5%程度になることが多い)で「今の価値」に引き直し、それを複数年で合算して現在価値を割り出すのが、このDCF法の考え方である。

 

M&AにこのDCF法を利用する場合、複数年度の事業計画を立てて、毎年度のキャッシュフローを算出し、年度ごとに複利計算で割り引いたものを合計して企業価値とする。通常は「年買法」でみたように5年間程度で計算するが、将来的な価値も加味する場合は、「継続価値」も算定して合算する。本来は詳細な計算式を用いるが、概念を簡単に示すと下記のようになる。

 

企業価値 = (毎年度キャシュフロー ÷ 毎年度割引率)の合計

 

なお、DCF法は、上場会社等の大手企業のM&A、不動産や債券価値評価に利用されることが多いが、将来の見通しを立てづらい業種や中小企業のM&Aにはあまり向いていない。

 

DCF法の大きな特徴は、売上や資産額に直接的にあまり影響されず、純粋な事業からの利益をベースに企業価値を算定する点にある。したがって、会社を設立したばかりで赤字ばかり溜まっているが、技術やビジネスモデルに魅力があって将来性があると判断されれば、驚くような値段がつくこともある。会社の財務内容に自信はないが、ビジネスモデルや技術に自信があって、将来は絶対ブレークするという自信がある場合は、DCF法を使うのも一案と言える。

 

どのような企業価値算定方法を選択するにしても、買収側と譲渡側との間で納得のいく理由で、かつ、第三者が見ても妥当と思われるような価格であれば問題はないが、あまりに事業の実態や財務内容とかい離した価格で売買が行われると、税務上の問題(低廉譲渡や贈与など)が発生したり、株主から訴訟を起こされるリスクもあるので、企業価値を算定する際には税理士や会計士などの専門家に依頼することをお勧めしたい。