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M&A成功のポイント⑤大切なのは「アフターM&A」(前篇)

▶譲渡手続きが終わったもトラブルは起こる

M&Aの手続き自体は、譲渡が終わって譲渡対価の支払いが終われば完了である。M&Aアドバイザーの仕事も「譲渡が完了するまで」が請負期間なので、譲渡が終わってしまうと基本的に案件に関わることはなくなる。しかし、実際には譲渡が完了した後にも色々なトラブルは発生するのである。

 

例えば、事業譲渡の場合、「何月何日の何時」をもって事業を切り分けるのだが、当然その日時までに口座の切り替えが間に合わない取引先も発生するため、売上代金の一部が前の会社に入金されたり、譲渡後の会社に請求が来たりという事態が発生する。このような入金や支払のミスは双方で事後生産すれば済むのだが、もっと深刻なのは譲渡後に得意先や仕入先との関係が途切れて、明らかに売上高(受注金額)が減少したりするケースである。酷いケースでは、半年後に譲渡時点で譲り受けた得意先の半数が取引を辞めてしまったという話もある。こうなると、買収会社としては「話しが違うではないか」という風にクレームをつけてきたり、裁判になってしまうこともある。

 

こういったトラブルを回避するためには、事前にこのようなトラブルが発生することを予測してスキームを策定するか、ある程度得意先が減少するリスクを覚悟の上で譲渡を実行するかのどちらかしかない。社員や従業員などの人的つながりによる取引が多い中小企業では、M&A後に得意先や仕入先との関係が悪化して、事業運営に影響を及ぼす事態も考えられるので、社長には一定期間顧問や会長という肩書で円滑な引き継をサポートしてもらう方が望ましい。また、M&Aのスキームについても、事業譲渡よりも、得意先や仕入先との関係が継続できる株式譲渡の方が比較的安全と言える。

 

また、製造業など工業に関連した土壌汚染問題にも注意が必要である。M&Aの手続き自体は非常にうまく行ったのに、譲渡した後で土壌汚染が発覚し、訴訟沙汰になってしまったケースもある。訴訟にまで至らなくても、譲渡直前のDDで土壌汚染が発覚してM&A自体が見送りになってしまうこともあるのだ。ケミカル系工場の買収を検討する際は特に気を付けなければいけないが、まったく関係のない事業を行っているのに、その昔有機化合物の工場だったとか、近隣の工場から流れ出した物質で土壌汚染されてしまうことがあるので、自社が工場の譲渡を検討している場合は、敷地内の数か所で土壌調査をしておく方がよい。知らずに譲渡してあとで揉めるより、ある程度敷地の状況を把握しておけば、地質改善会社に依頼して汚染物質の除去や中和をしておくなどの対策を講じることができるからだ。

 

これからのトラブルはスキーム策定や事前の確認でかなり回避できるが、M&A後一年程度は何かしらの問題が発生するものなので、トラブルを最小限に抑えるというスタンスで対応しておくとよいだろう。