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M&A成功のポイント④専門家を上手に使う(後篇)

▶弁護士

これまでも説明してきたとおり、M&Aアドバイザーはあくまでも「助言者」であって、直接的な決定権を持つ当事者ではない。また、弁護士以外のものが報酬を得て法律事務(契約書作成など)を行うことは弁護士法第72条で禁止されている。従ってM&Aに関する契約書の類は、M&Aを実行している当事者(譲渡会社や買収会社、オーナー)が作成するか、弁護士に作成を依頼する必要がある。実務上は、ほとんどのケースで過去に使用した契約書の雛型や、「契約書雛型集」(最近はインターネットでも入手可能)といった基本文例があるので、その内容をベースに案件に合わせて修正して活用可能だが、作成した書類の内容に自信がない場合は、弁護士の先生にチェックをお願いすることをお勧めする。

 

また、事業再生型M&Aや、複雑に入り組んだスキームのM&Aを実行する際に頼りになるがM&Aに精通した弁護士である。我々も民事再生を申請した会社へのスポンサー紹介や、資金繰りに行き詰って運営が立ちいかなくなった会社の支援のため、弁護士事務所と連携して案件を進めることがあるが、この分野を得意としている弁護士の場合、単に法律の専門家ということだけではなく、財務諸表の読み込みや分析、収益性の評価までできてしまうことも多く、相談に行った社長もビックリするほど事業者の立場で対応してくれる先生も多い。LED関連加工会社のM&Aについて、ある有名な弁護士事務所の先生に相談にうかがったら、自分もLEDメーカーの顧問をやっているとこのとで、その技術優位性や製造工程について熱く語って頂いたことがある。まるで技術者にLEDの説明をしてもらったようで、正直なんの相談に行ったのかよく分からなかったが、その知的探求心については非常に感服した。

ただし、弁護士の先生に丸投げしてしまうと、かなりのコストがかかる可能性もあるため、普段から法律相談ができる顧問契約を結んでおいたり、依頼する内容を事前に十分調べておいた上で、ポイントを絞ってアドバイスをもらったり、気になる点を伝えて契約書の作成や修正依頼をするとよいだろう。

なお、一口に弁護士といっても、その専門分野は多方面にわたっているため、弁護士にはそれぞれ得意分野がある。M&Aに関するところでは、企業法務や労務関係がメインなので、弁護士事務所に依頼する際は、報酬体系や得意としている分野を確認した上で、自分の性格や仕事の進め方を理解してくれて、良い相談相手になってくれそうな弁護士の先生と契約するようにしたい。会社がピンチの時などに、弁護士の先生に励ましてもらえたりすると、存外安心できるものだ。単に法律家というとらえ方ではなく、社長のよき理解者として力になってくれて、長くお付き合いできそうな先生に出会えれば、きっと大きな財産になるだろう。

▶その他の専門家

その他にも、M&Aに限らず中小企業経営全般のスペシャリストである中小企業診断士、M&Aに関連した登記作業や不動産関連の資料分析に精通している司法書士、M&Aにおける労務管理全般に対応できる社会保険労務士などが、M&Aを実行する際にサポートしてくれることもある。

不動産を保有している会社のM&Aをする際や、事業譲渡のために受皿会社を新たに設立する際などは、司法書士の先生に個別作業を依頼することが多いため、ワンポイントで手助けしてもらう形が一般的だろう。

事業譲渡を実行すると、事業の譲受と一緒に従業員も転籍してくることになるが、その際、転籍が確定している従業員全員分の転籍(再就職)手続きを取る必要があるため、従業員数が多いケースでは労務管理が結構面倒なことがある。こんなときは、社会保険労務士に作業を一任してサポートしてもらうとスムースに譲渡手続きが進むので、利用することをお勧めする。

いずれの場合でも、M&Aを進める局面に見合った専門家の先生にその都度的確なサポートをしてもらうことで、M&Aをよりスムースに進められることを、是非覚えておいてほしい。