NEWS

M&Aの実行手順⑫クロージング・前篇

DD前と後ではどれだけ違う?

多くの場合、DDを実施した会計事務所や弁護士事務所から、DD実施後一週間程度で「調査報告書」の形でまとめた報告書と関連資料が届けられる。この報告書について、調査担当者から買収会社に対してDDの報告がなされるのだが、中小企業のM&Aの場合、「何も見つけられませんでした」ということはほとんどなく、むしろ、ボコボコと粗が出てくることが多い。

以前紹介した「不良資産が数億円あった」というケースは、実はまだいい方で、「株券を担保にしてお金を借りていた」「○○銀行からの融資は実はノンバンク(サラ金)からだった」「売上高の20%が架空売り上げだった」などという酷いケースもある。あまりに酷い場合は買収そのものが見送りとなるが、そうならない場合でも、DD実施前と後では、企業価値(買収金額)が下がってしまうのがほとんどだ。

回収不能な売掛金や不良在庫、不動産や有価証券の評価損など、明らかな減価要因がある場合はやむを得ないが、会計DDについては、税務上の解釈や会計上の評価を保守的に(固め)にすることも減価要因となることがある。例えば、ある売掛金を6か月間回収できない状況であった場合、譲渡会社が「分割で回収できる見込みです」と答えているのに対し、DD担当者に「これは回収の見込みなしです」と判断されてしまうと、その分が減価されてしまうのだ。

 

DDの結果、不動産や有価証券の含み益があって、その分が加算されるケースもあるが、やはり減価されることも多いため、結果的に買収金額も下がることが多い。減価額は企業規模や案件によってまちまちなため一概には言えないが、減価額が数百万円~数千万円程度(譲渡対価総額の10%以内)であれば、譲渡会社のオーナーへ説明しても交渉可能な範囲の変動と言える。もちろん「びた一文まけません」というオーナーであれば、減価部分を「営業権(のれん)」の上乗せでカバーしたり、退職金の上積みをしたりすることで対応する方法もあるが、企業価値の評価と減価理由が適正であれば、無理に案件を進めずに諦めるという判断もある。

 

先ほども述べたように、M&Aは相対取引なので、双方が納得いく条件で譲渡を実行すればよく、買収サイドがどうしても欲しいと思えば上積みすればいいし、譲渡サイドがどうしても譲渡したいと思えば減額を受け入れれば良い。非常に悩ましい選択だが、このような微妙な条件交渉をする場合の妥協点を探る際には、私たちのようなM&Aアドバイザーなどの専門家による経験に裏打ちされたアドバイスが非常に有効となってくると自負している。