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M&Aの実行手順⑥条件交渉・後篇

 

<経営戦略としてのM&A>(17)M&Aの実行手順⑥条件交渉・後篇

▶よくある条件交渉のポイント(続き)

 

④社長の個人保証

通常、中小企業が金融機関から融資を受けている場合、金融機関から会社保有の不動産や有価証券等に担保権が設定されているが、更に社長個人の資産を背景にして個人保証も取られていることが多い。M&Aで会社の所有権をすべて譲渡し、社長として報酬を受けることもなくなる場合は、この個人保証も解除するのが普通だ。しかし、多額の金融債務が社長の責任によるものだったり、何らかの理由で社長を会社に引き留める必要がある場合は、顧問等の名目で残って頂く一方で、個人保証もその間継続してもらうことがある。

 

⑤従業員の引継ぎ

株式譲渡の場合は従業員も一緒に引き受けるので当たり前だが、事業譲渡の場合は買収側が引き受ける従業員も選べるため、条件交渉の対象となる。引き継ぐ事業がうまく回っている場合は、よほどのことがない限り、全員引き受けるのが一般的だが、損益がギリギリの場合や、問題を起こしている従業員がいる場合は、引き継ぐかどうか十分に交渉をすべきである。

 

⑥従業員の待遇

第一章でも触れたが、買収された従業員にとってM&Aというのは突然やってくる黒船のようなものなので、得体のしれない第三者に会社が乗っ取られた気持ちになったり、自分が売り飛ばされたような気持ちになる可能性がある。会社というのは従業員が働いてこそ成り立つものなので、従業員にやる気になって働いてもらうためにも、M&Aへの理解と支持を得ることは極めて重要である。

基本的には従来と同じ待遇を維持することを明確に伝えるのはもちろんだが、業績次第では待遇改善されるというプラスαの提示や、キーマンとなりそうな従業員を役員に登用するという対応も、従業員を安心させる意味では効果的だ。

 

⑦役員構成

支配権の獲得を目的としてM&Aを実行した場合は、議決権の51%以上を取得しているはずなので、株主(オーナー)としての権利確保は大丈夫だが、経営権を委任している取締役会についても同様に過半数を握っておいた方がよい。これは重要議案について取締役会で反対されると、株主が思った通りに経営できなくなる可能性があるためで、しっかり経営まで掌握しておきたいのであれば、役員構成の過半数を握っておくべきである。3人体制であれば買収会社から2人、5人体制であれば3人、という風に自社の立場で働いてくれる役員を過半数を派遣しておく(非常勤でもOK)方がよいだろう。

 

ほかにも会社の名前(商号)を継続して使ってほしい、事務所はそのまま使ってほしい(オーナー所有のビルに入居している場合が多い)といった要望や、社有不動産を譲渡してほしい(そのまま継続して賃借することが前提)といった要望もよくある条件だ。買収側にとっては、事業継続をする上で必要かどうか判断しつつ、相手の事情もある程度考慮した形で交渉すると、双方の妥協点を見出しやすい。