2018/04/26

M&Aの実行手順➉デューディリジェンス(買収監査)・前篇

出てきた資料を鵜呑みにしない

基本合意書を締結した後にまず実施するのは、
対象会社の内容が本当に開示されている資料通りなのかを詳細に調査する
「デューディリジェンス(Due Diligence)である。
日本語では「買収監査(詳細調査)」と訳されることがあるが、
通常は短縮した「デューディリ(デューデリ)」や
「DD」という略称で呼ばれている(以下、本書では「DD」とする)。

中小企業のM&Aを取り扱っていると、小さい案件を進めている場合、
買収会社から「DDなんてやらなくてもいいんじゃないか?」という
質問をもらうことがある。
確かに譲渡会社から事前にさまざまな資料開示を受けているので、
その内容をしっかり分析しておけばDDは不要という考え方もある。
しかし万一、開示資料に間違いがあったり、重要情報が開示されていなかったどうだろうか。
譲渡契約書を締結して対価を支払った後に気づいたとしても、
取引先への案内や人員配置をした後では取り返しのつかない事態になり得る。
最悪の場合、払ったお金が返ってこないばかりか、
譲り受けた会社や事業も消滅してしまう可能性だってあるのだ。
多少コストや時間がかかったとしても、
あとからトラブルに巻き込まれないためにも、
できるだけDDは実施した方が良い。

以前に手掛けた案件で、税務申告した決算書上は
簿価純資産額(資本の部合計)が1億7000万円もあったのに、
DDを実施して時価純資産を算定したところ、
なんと1億の債務超過だったという事例がある。
つまり、資産として計上されていたもののうち、
2億7000万円が不良資産だったということになる。
回収不能の売掛金や不良在庫が大量に発見されたためだが、
一番驚いていたのは買収会社ではなく、当の譲渡会社社長だった。

この社長、自分でそれほど大量の不良資産があったことを把握していなかったのだが、
実はこれ、結構他人ごとではない。
先日ある経営者の勉強会で、
自分の会社の純資産額を把握しているか聞いたところ、
数十名の参加者中、手を挙げたのは僅かに2名程度だった。
長年会社の経営をしていると、自分でも忘れてしまった「負の遺産」があるものだが、
M&Aで会社を譲渡しようと思うなら、
フタをしていた「見たくないモノ」に何等かの決着をつけなければならない。
いざという時に恥かしい思いをしないように、
普段から会社の資産内容や企業価値いは注意を払っておくべきだろう。

DDで調べる内容は?

中小企業のM&AでDDを実施する場合は、
最低限必要なのは会計DD(財務DD)である。
文字通り財務諸表や会社帳簿について、
総勘定元帳や各種証憑類(請求書や納品書、領収書など)を詳細に亘ってチェックし、
適正な税務申告が行われているか、
会計資料が正しく作られているかを確認する。

会計や税務の調査を加えて大切なのは、
会社の法律関係を調べる法務DDである。
各種契約書類の内容確認や、訴訟の有無、
会社設立や株主変遷といった会社管理関係のほか、
特許情報、許認可の内容など無形資産の実存性についても
詳しく調査しておいた方がよい。
また、労働者とのトラブルもよくあるので、
サービス残業の有無や行政指導の履歴、
従業員との訴訟問題を抱えていないかという点もチェックしておく。

このほかM&AのDD、ITレベルや技術力を精査するITDDなどがある。
どのような点を調査するかは案件次第なので、
必要に応じて適宜選択して実施する。

DDをどこに頼むか?

M&AのDDを行おうとする場合、
一般的には会計DDは会計士事務所や税理士事務所、
法務DDは弁護士事務所に依頼するが、
過去に何度もM&Aを実行した経験がある会社なら、
社内の管理部門や経理部門の担当者が対応することも可能である。
中小企業の場合は、自社の顧問税理士や会計士、弁護士に依頼したり、
M&Aアドバイザーに依頼してM&Aに精通した
専門家を紹介してもらうのものよい。

DDを外部専門家に依頼する場合は、
できればM&AのDD経験がある専門家を選定することを強くお勧めする。
M&AのDDは、対象会社の社内に
DDルーム(会議室等を貸切にして使うことが多い)を作って実施するが、
中小企業の規模だと通常は2日~4日程度で完了させる必要がある。
これは余りに長い時間外部の専門家が
会社の重要書類や内容について根ほり葉ほり調べていると
従業員から不審がられたり、
M&A情報が外部に漏れてしまう危険性があるためだが、
短期間にポイントを絞って的確な調査をするには、
相応の経験と実績が必要だ。M&Aの経験がない場合、
長期間調査を行っても、
結局トンチンカンな調査結果になってしまうことがある。
過去の事例では、M&Aの調査なのに、
資産内容の実存性や時価評価を忘れたり、
法律資料の調査はせずに不動産の内容ばかり調査して
報告してきたところもあった。
折角、費用をかけて調査をするのだから、
依頼する専門家の選定は慎重に行ってほしい。

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